同性カップルの養子縁組についてのメリット・デメリット
現在の日本の法制度では同性婚が認められていないため、同性カップルには法的な保護がほとんどありません。
法的な保護・経済的メリットによりパートナーを守るには
養子縁組がひとつの方法としてあります。 養子縁組は、自然な血縁関係のない者同士の間に「法的な親子関係」を作る制度で、婚姻とは性質が異なりますが、同性カップル間の「親族関係」を作り出すことができます。
これは、二人以外の第三者にも”身内”としてその関係を主張できるということなので、
- 二人で同じ氏を名乗り、同じ戸籍に入れる
- 二人で一緒に住む家を探しやすくなる
- パートナーが老人ホームに入る際の保証人になれる
- パートナーの緊急時に医療行為の同意等ができる
- パートナーが亡くなったときに相続権が発生する
- パートナーを扶養家族として所得税の様々な控除が受けられる
- パートナーを社会保険の扶養家族にすることで保険料負担を減らせる
- パートナーが死亡したとき、もう一方が遺族年金を受給できる
など、法律上の夫婦に準じたメリットを得ることが可能になりますが、一方でさまざまなデメリットもあります。 養子縁組をして親族関係になることで、パートナー間には
民法730条:直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。という法律上の効果が発生しますが、法律上の夫婦に対する規定ほど強いものではありません。
具体的には、お互いの関係が悪化したり破綻してしまったときにこの問題が発生します。 例えば、生活費を不当に支払わない相手方に対しての生活費(婚姻費用・共同生活費用)の請求権や、パートナーシップを解消する際の財産分与請求権など、法律上の夫婦間で認められている保護が受けられません。
また、貞操義務(パートナー以外と性的関係を持たない義務)もないので、パートナーの浮気が原因で関係が破綻しても慰謝料の請求をすることはできません。 また、養子縁組ではパートナーのうち年長者が自動的に「養親」となり年少者は「養子」となります。
そして、養子となったパートナーは養親となったパートナーの氏を名乗ることとなります。
法律上の夫婦のように、どちらの氏を名乗るか選択することはできません。 そもそも、養子縁組は「親子になりたい」という意思に基づいておこなうものですが、同性カップルの本音は「夫婦になりたい」であり、本音と建前のギャップが生じている状態になります。
役所の届出時には、二人の関係の中身まで突っ込んで聞かれることもないので、問題なく縁組が成立しますが、例えばパートナーの一方が亡くなって相続が発生したとき、死亡したパートナーの親族から「養子縁組は無効だ」と訴えられてしまう可能性があります。
(例えば、性交渉を多く伴うような関係であれば、「親子であるというのに公序良俗に反する関係だ!」と突っ込まれる可能性があります。)
特に親族が二人の関係を快く思っていない場合、トラブルが起きてしまう可能性は否定できません。 将来、同性婚が法制化された場合にも問題があります。
現行の法律では養子縁組解消後の当事者同士は異性同士であっても婚姻することができません。
(民法736条:養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定(※離縁)により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。)
もともと親子関係にあった者同士が結婚出来てしまうとすると、社会秩序が大きく乱れてしまうということが理由として考えられます。
同性カップルに対してこの問題に関する配慮がなされるかどうかは不透明であり、大きなリスクではあります。
養子縁組のメリット・デメリットの比較
メリット | デメリット |
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- 第三者にも身内として主張できる
- カップルで同じ氏を名乗ることができる
- パートナー間に相続権が発生する
- 税務上の恩恵が受けられる
- 健康保険・年金など社会保険上の恩恵が受けられる
| - 婚姻費用(共同生活費用)の分担・財産分与請求権といった法律上の夫婦のような法的保護がない
- 当事者間の年齢によって親子(氏)が自動的に決まる
- 「養子縁組をする意思」をめぐって縁組が無効になるリスクがある
- 同性婚が法制化されたとき、結婚できない可能性がある
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