相続手続 遺言書作成 死後事務委任 の専門家
夫婦の間に未成年の子がいる場合は、父母のどちらが子の親権者になるかを決めておかなければなりません。
離婚協議書の有無に関わらず、親権者を決めておかなければ離婚届は受理されません。
親権には身上監護権(子どもの衣食住の世話をし、教育やしつけをする権利と義務)と財産管理権(財産を管理する能力のない未成年に代わって法的に管理し、契約や相続などの代理人になる権利と義務)の2つがあります。
この中には
①子どもの住む場所を指定する
②子どもが仕事(アルバイト)をするときに、判断し許可を与える
といった内容も含まれています。
この、身上監護権の部分の権利と義務を負うのが監護権者、財産管理権の部分の権利と義務を負うのが、親権者となります。
例外的に、子どもを引き取らない親が親権者となり、引き取った親が監護権者となるケースがありますが、親権がなく、監護権だけがある母では、各種手当の受給ができず、父親の協力が必要になる、学校の選択がスムーズに進まないなど、暮らしの中のさまざまな場面で不都合も出てきますので、原則的には親権者と監護権者は同一にします。
また、2人以上子どもがいる場合は、それぞれ親権者を決めなければいけませんが、子どもへの影響を考え、原則として同一の親権者が望ましいとされています。
親権者は、子どもの福祉(生活環境や精神的な影響)などを考慮して決めます。
裁判でも、育児放棄や虐待などの特別な事情がない限り、実際に子どもと生活し、面倒を見ている親を優先して親権者にします。
親の気持ちやエゴではなく、子どもの利益を優先することが必要です。
胎児 | 妊娠中に離婚した場合は、原則として母親が親権者となります。出生後、話し合いによって父親に変更することも可能です。 |
0~満9歳 | 乳幼児期には、母親の世話や愛情が必要とされ、母親が親権者になる場合がほとんどです。 |
満10~満14歳 | 母親が親権者になる場合が多いですが、子どもの意思を考慮に入れて決定することもあります。 |
満15歳~満19歳 | 子どもが満15歳以上の場合は、子どもの意見を聞かなければなりません。子どもの意思をまず尊重します。 |
2024年(令和6年)5月に成立した民法等改正法は、父母が離婚した後もこどもの利益を確保することを目的として、こどもを養育する親の責務を明確化するとともに、親権、養育費、親子交流などに関するルールを見直しています。
法律の施行は、2026(令和8)年5月までにと予定されており、本記事執筆時においては施行されていません。
今回の改正により、離婚後は共同親権の定めをすることも、単独親権の定めをすることもできるようになります。
協議離婚においては夫婦(父母)の話合いにおいて親権者を双方にするか一方にするかを決めます。
協議が調わない場合や裁判離婚の場合は、家庭裁判所が、父母とこどもの関係や、父母同士の関係などさまざまな事情を考慮し、こどもの利益の観点から、親権者を双方にするか一方にするかを決めます。
なお、こどもへの虐待のおそれがある場合、DVのおそれなど、父母が共同して親権を行使することが困難であると認められるがある場合などは、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをすることとされています。
共同親権の定めをするためには、離婚後の夫婦(父母)が信頼関係・協力関係を築き、維持できることが大前提となります。
離婚後の親権者の変更については、こどもの利益のために認められるときは、家庭裁判所が、こども自身やその親族からの請求により親権者の変更(①父母の一方から他の一方、②一方から双方、③双方から一方)をすることができます。
法改正以前に離婚し、単独親権の定めをした場合でも、法改正後に共同親権への変更ができる可能性はありますが、親権者の変更はこどもの利益に重大な影響を与えるため、「父母の合意だけでは決定できない(必ず家庭裁判所が関与する)」というのが大きなポイントです。
法改正により父母双方が親権者である場合の親権の行使方法のルールが明確化されています。
①親権は父母が共同して行います。ただし、一方が親権を行うことができない場合は他方が行います。
②監護教育に関する日常の行為をするとき、こどもの利益のために急迫の事情があるときには、親権の単独行使ができます。
監護教育に関する日常の行為とは、日々の生活の中で生じる監護教育に関する行為で、こどもに重大な影響を与えないものをいいます。個別具体的な事情にもよりますが、日常の行為に当たる例、当たらない例として次のようなものがあります。
日常の行為に当たる例(単独行使可) | 日常の行為に当たらない例(共同行使) |
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父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては親権の行使が間に合わず、こどもの利益を害するおそれがある場合などの急迫の事情があるときは、日常の行為にあたらないものについても、父母の一方が単独で親権を行使できます。
①DVや虐待からの避難(転居を含む)をする必要がある場合
②こどもに緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合
③入学試験の結果発表後に入学手続きの期限が迫っている場合
などが具体例としてあげられます。