相続手続 遺言書作成 死後事務委任 の専門家

任意後見契約のしくみ

任意後見契約は、将来、認知症などで意思表示ができなくなった場合に備えて、財産管理や生活に必要な契約・手続きなどをサポートしてくれる人「任意後見人」を、あらかじめ選んでおくことのできる契約です。 「暮らし丸ごとサポート」にご契約いただく65歳以上の方には、原則として任意後見契約の契約もお願いしております。

認知症になるとこんなことで困るかも…

  • 財産や貴重品の管理ができなくなる
  • 日常生活に必要なさまざまな手続きができなくなる
  • 健康管理・衛生管理ができなくなる
  • 介護や医療のサービスが必要なのに自分で契約が結べない

認知症が進行して判断能力が衰えると、経済面においても健康面においても、自分の身を守るのが困難になり、セルフネグレクト(自分で自分を虐待してしまう)状態に陥ってしまう危険性があります。 特におひとり暮らしの方は、周りに生活のサポートをしてくれる人がいないため、これらの状態に陥ってしまうリスクが高くなってしまいます。

認知症の方の「できないこと」を手助けをする成年後見制度

成年後見制度は、平成12年にスタートした制度で、認知症や精神障害により自分自身で重要な判断ができない人に不利益が生じないよう、法律的なことや生活面に配慮しながらさまざまな契約や手続きを支援してくれる人「成年後見人」を定める制度です。

後見人は、本人(サポートを受ける方)のために財産管理や生活に必要な契約・手続きをサポートをおこない、本人の財産の中から報酬の支払いを受けます。
後見人は、家庭裁判所又は家庭裁判所が選任する後見監督人に対し、定期的に事務の内容や費用の支払い明細などを報告しなければならず、家庭裁判所・後見監督人は、後見人が財産の流用などをおこなっていないか、仕事ぶりを監視する役割を担います。
成年後見制度では、家庭裁判所も関与しつつ支援をおこなうことで、認知症になった方の生活の質の向上を目指します。

成年後見制度のイメージ

法定後見と任意後見

成年後見制度には、すでに認知症が進行している方のために家族などが裁判所に申立てをして後見人を選ぶ法定後見と、認知症になる前にあらかじめ後見人となる人を契約で選んでおける任意後見の2つのシステムがあります。
任意後見契約では、認知症になる前から、後見人となる人と交流がはじまりますので、信頼関係が醸成しやすく、ご自身の希望どおりのサポートを受けることができるというメリットがあります。

特徴の比較法定後見任意後見
概要認知症が進行したときにはじめて後見人を選ぶ認知症になる前に後見人になる人を契約で選ぶ
後見人の選任方法家庭裁判所が後見人を選ぶ (知らない人が後見人になるかも知れない)自分が信頼できる人を後見人に選べる
支援・サポートの内容支援の内容は後見人や家庭裁判所が決める
(100%自分の希望通りのサポートが受けられるわけではない)
どんな支援を受けるのか オーダーメイドで決められる
報酬家庭裁判所が後見人の報酬額を決める
(自分で報酬額を決められない)
後見人になる人と話合いで 自由に報酬を決められる
サポート開始のタイミング利用開始の手続きに協力者が必要
(必要なときすぐサポートを受けられない)
必要なタイミングで 素早くサポートを開始できる

任意後見人の主なサービス内容

任意後見契約では、財産や生計の維持・管理、住環境整備や適切な医療・介護契約の締結など、お客様の財産を守りつつ、生活の質を保全・向上させることを目的としたさまざまなサポートをおこないます。

どんなサービスを受けるかは契約前に話し合って、自由に組み合わせることができます。
主なサービス内容

貴重品の管理


通帳や印鑑、各種権利証や証券などの貴重品を管理します。

定期的な収入や支出の管理


年金などの定期的収入の受領や生活費などの定期的支出の支払い、関連する諸手続きをおこないます。 支出が収入を上回らないように注意しながら、適切な生活計画を立てます。

生活環境の整備・介護契約のサポート


生活状況に応じて、家事をしてもらうヘルパーとの契約や、訪問介護契約をおこないます。
自宅で生活するのが困難になった場合は、介護施設と入所契約をします。
契約に必要な情報収集や適切なサービスが受けられているかどうか処遇を監視することもおこないます。

不動産に関する契約・手続き


自宅不動産の賃貸借契約や関連する諸手続きをおこないます。
賃貸収益物件をお持ちの場合は、入居者との契約・家賃収入の管理などをおこないます。

医療に関する契約・諸手続き


病気になって病院で診察を受けたり、入退院が必要になった場合の契約、費用の支払いなどをおこないます。 また、医師から病状や治療法の説明を受けたり、診察に同席したりします。

遺産相続に関する手続き


遺産の相続人になった場合の相続手続きを代理します。
原則として、法定相続分相当の遺産を確保し、不利益が発生しないようにします。

各種行政上の手続き


住民票、戸籍謄本、納税証明書など、行政機関の発行する証明書の請求・受領に関する手続きをおこないます。
また、要介護認定の申請などの手続きをおこないます。

金融機関との取引


上記の各手続きの目的を達成するために必要な範囲内で、預金の引出し、振込など、金融機関での手続きをおこないます。

後見人の仕事に含まれないもの

下記の内容は任意後見人の仕事に含まれませんのでご注意ください。

直接、家事や介護をすること


家事や介護などの行為はヘルパー等がサポートします。後見人は、それらの利用契約や情報収集などを担当することが仕事になります。 日用品の購入程度のことであればサポートは可能です。

財産の投機的運用


後見人の仕事は、財産を減らさないように維持しつつ、生活設計をすることにあります。 株式投資などの投機的運用や、不動産の売却などの行為は、家庭裁判所に厳しく制限されているため、原則としておこなうことができません。

入院、施設入所の際の身元保証人や身元引受人になること


入居費用の支払いが滞った際の費用保証や、死亡時の身元引受保証は後見人個人として責任を取ることができないので、原則としてできません。 ただし、死後事務委任契約を別途結んでいる場合は、身元引受人になることが可能です。

病気の治療や手術など、医療行為に同意すること


医療行為の決定は、本来、本人しかできない行為なので、後見人に同意権はありません。(厳密にいうと、家族であっても同様です。) 生命の危険が迫っている場合は、原則として、救命・延命に必要な処置を医師の判断でおこなってもらいます。 もし、延命治療を拒否したいなどの希望があれば、事前になんらかの意思表示をしていただく必要があります。

遺言や養子、認知、離婚などの意思表示


これらの行為は「一身専属的な行為」といって、本人の自由意思にのみ基づいてできる行為ですので、後見人が代理することはできません。

任意後見契約のサービスが利用できる期間

任意後見契約は、万が一、ご自身が認知症になってしまった時の保険のようなものとお考えください。 契約の成立後、すぐに契約で定めた内容のサービスが開始されるわけではなく、サービスを利用しない期間の報酬は発生しません。
認知症が進行して判断能力が衰えたタイミングで、家庭裁判所に任意後見の開始の申立てをして、審判が出るとサービスが開始されます。
※家庭裁判所への申立時には医師の診断書(認知症が進行し後見人が必要という証明)が必要となりますので、後見人の恣意的な判断で任意後見が開始されることはありません。
サービスの対象期間は、原則としてお客様が死亡するまで継続し、この期間、契約で定めた額の報酬が発生します。(報酬は、お客様の財産の中から控除させていただきます。)
お客様が死亡したら任意後見契約は終了します。 別途、死後事務委任契約を結んでいる場合はそのサービスに移行し、葬儀・埋葬や遺品整理などの処理をおこないます。 また、遺産については、遺言に基づいて処理をおこないます。

任意後見契約のサービス期間

認知症にならなければ後見契約は開始されない
任意後見契約を結んでも、生活に支障をきたすレベルの認知症にならなければ、任意後見契約のサービスを利用することなく、死亡にまで至ることもあります。 ご自身の意思決定で自立した生活がおくれるのであれば、それが一番ですし、任意後見契約を利用しないで済むのであれば、それに越したことはありません。

任意後見契約の報酬額

当事務所で任意後見契約を受任する場合の報酬額は、管理する財産総額によって異なります。

管理する財産総額報酬額
3,000万円以下1か月あたり 20,000円
3,000万円超5,000万円以下1か月あたり 30,000円
5,000万円超1億円以下1か月あたり 40,000円
1億円以上1か月あたり 50,000円
※不動産や医療に関する契約など、重要な法律行為の代理をおこなう場合は、1回につき2万円の報酬が加算されます。
お問い合わせ 電話をする