相続手続 遺言書作成 死後事務委任 の専門家
同性カップルの養子縁組を考える
養子縁組で得られること。届出前に知っておきたいこと。
「相手に財産を残したい」「家族として支え合いたい」。そのための方法として、養子縁組を考えている方もいらっしゃるでしょう。
養子縁組をすると、二人は戸籍上の親族になり、相続や扶養の制度を利用する立場になります。相続・医療・お金の場面ごとに、二人の暮らしがどう変わるかを説明します。

養子縁組の大きなメリットは、法律上の親族になり、相続権と互いに扶養する関係をつくれることです。
一方、つくられるのは「親子関係」です。養親が先に亡くなる場合と、養子が先に亡くなる場合では、相続・年金の扱いが違います。さらに、離縁しても残る婚姻制限があるため、将来結婚を望む方はこの点も含めて判断します。
このページでは、主に日本人の成人同士で行う「普通養子縁組」を説明します。子どもを迎える特別養子縁組とは異なります。外国籍の方が関わる場合などは、適用される法律や手続きを個別に確認します。
普通養子縁組をすると、一方が「養親」、もう一方が「養子」になります。戸籍で親族関係を証明でき、相続や扶養について、親子としての権利・義務が生じます。
養親は20歳以上で、自分より年長の人を養子にはできません。例えば50歳と45歳の二人なら、50歳の方が養親、45歳の方が養子になる組合せです。二人の好きな方の氏を選ぶという制度ではありません。
また、普通養子縁組をしても、実の親との親子関係は続きます。養子は養親側の血族とも親族になり、実家側と養親側の双方に相続・扶養の関係が広がります。
ここでの前提:Aさんが養親、Bさんが養子。お二人とも法律上の配偶者がおらず、今回の養子縁組以外に、相続人となる子・孫などがいないケースです。遺言による別の指定、相続放棄などがない場合の説明です。
Aさん〈養親〉が先に亡くなると
Bさんが唯一の「子」として相続人になります。Aさんの実の親や兄弟姉妹が存命でも、Bさんと共同で相続することはありません。
Bさん〈養子〉が先に亡くなると
AさんもBさんの実親も、法律上は同じ「親」です。実親が全員亡くなっていて、ほかに養親もいなければ、Aさんがすべてを相続します。
| Bさんの実親の状況 | 法定相続分 |
|---|---|
| 実父・実母とも存命 | Aさん・実父・実母が各3分の1 |
| 実親のうち一人が存命 | Aさんとその実親が各2分の1 |
| 実親が全員亡くなっている | Aさんが全部 |
ほかに養親がいない前提です。Aさんという「親」が相続するため、Bさんの祖父母や兄弟姉妹は相続人になりません。
実親が存命でも、パートナーに全部を残したいなら、遺言を用意します。
例えば、Bさんが「全財産をAさんに相続させる」と遺言すれば、Aさんに財産を集める指定ができます。ただし、実親には遺留分があります。実父・実母とも存命の上の例では、実父・実母の遺留分はそれぞれ遺留分算定の基礎となる財産額の9分の1です。請求を受けた場合の金銭の支払いも見込んで準備します。
「全部を相続する」には、預貯金や不動産だけでなく借入金などの債務も含まれます。また、相続人が一人でも、名義変更や口座の解約は必要です。財産・負債の一覧、遺言、手続きを担う人を準備しておくと、残された方が動きやすくなります。
過去の婚姻などによるお子さん、ほかの養子、法律上の配偶者がいる場合は、相続人と取り分が変わります。その場合は上の例に当てはめず、実際の家族関係で整理します。
医療への備えの中心は、本人の希望を記録し、病院に共有しておくことです。誰に説明してほしいか、判断が難しくなったら誰に自分の考えを伝えてほしいかを決めておきます。
例えば、施設が身元引受人を「親族」と定めていれば、養子縁組によりその条件を満たせます。一方、「一定の収入があること」「緊急時に来られること」なども求められる施設では、その条件も満たす必要があります。
二人とも高齢で駆けつけが難しいなら、縁組だけでは対応できません。施設が求めているのが親族関係なのか、費用の保証なのか、実際に動く人なのかを先に確認すると、必要な準備がはっきりします。
例えば、会社員のAさんが、国内で同居する無収入の45歳のBさんの生活費を負担している場合。養子縁組をしてBさんが扶養親族になると、Aさんは所得税の扶養控除38万円を受けられます。38万円が返ってくるという意味ではなく、税金を計算する所得から38万円を差し引く制度です。
一方、二人とも働き、相手の合計所得が扶養の基準を超えている場合は、この扶養控除は使えません。2026年分の年末調整・確定申告では合計所得62万円以下が基準です。給与の額面年収とは異なります。
同一生計・年齢・事業専従者ではないことなどの条件を満たす場合の説明です。所得62万円の基準は2026年12月1日施行・2026年分から適用。年の途中の手続きや他の所得がある場合は、該当年の計算で確認します。
血縁のないパートナーに遺言で財産を渡す場合、その方に相続税がかかれば、原則として税額が2割加算されます。有効な養子縁組をして養親・養子として受け取れば、一親等の血族として、この2割加算の対象から外れます。
ただし、相続税がもともとかからない財産規模なら、2割加算がなくなることによる節税効果もありません。また、配偶者の税額軽減は養親子には適用されません。「縁組するといくら変わるか」は、財産額・相続人・渡し方をそろえて税理士に試算してもらうと判断できます。
ここでは血縁のないパートナー間の縁組を想定しています。実の孫を養子にする場合などは、2割加算の別の取扱いがあります。
例えば、会社の健康保険に加入するAさんと、国内で同居する無収入の45歳のBさん。Aさんが生活を支えていれば、縁組後のBさんは「子」として被扶養者の認定対象になります。認定されれば、Bさん自身の健康保険料の負担はありません。
収入がある場合の基本的な基準は、同居なら年収130万円未満かつ扶養する人の年収の2分の1未満です。60歳以上等は180万円未満、19~22歳の配偶者以外の方は150万円未満となる基準があります。自分の勤務先で健康保険に加入する方は、相手の被扶養者にはなりません。
ただし、養親子は配偶者ではないため、国民年金の第3号被保険者にはなりません。上の45歳のBさんは、健康保険の扶養に入っても、原則として国民年金は第1号として自分で納めます。免除等の制度は別に判定します。
ここでは、亡くなった方が厚生年金に加入し、保険料の納付など死亡した方側の支給要件を満たす例を考えます。
2026年10月現在、父母は死亡時55歳以上が年齢要件で、支給開始は60歳からです。生計維持は同一生計と収入要件等で判定され、養親に収入があっても直ちに対象外にはなりません。受給を判断する際は、同居・仕送りの状況と所得資料を用意します。同順位の受給者が複数いる場合の分配や、本人の老齢年金との調整もあります。国民年金の遺族基礎年金には「父母」の受給枠がありません。
年下のパートナーを養子にしても、その方の老後の遺族年金を確保する対策にはなりません。残す預貯金・住まい・保険などを含め、亡くなった後の生活費を別に準備します。
遺族年金を受け取れるかどうかとは別に、「未支給年金」を請求できるかも確認します。これは、亡くなった方に支払われるはずだった死亡月分までの年金のうち、まだ受け取っていない分などを、一定の遺族が自分の名で請求する制度です。亡くなった方の年金を、その後も毎月引き継ぐ制度ではありません。
有効な養子縁組によって「子」または「父母」となり、死亡時に生計を同じくしていれば、未支給年金の請求対象になります。実際に未支給分があり、先順位の請求資格者がいないことも必要です。養子縁組が、残されたパートナーの請求資格につながる具体的な場面です。
以下は国民年金・厚生年金の未支給年金について、お二人に法律上の配偶者がおらず、今回の縁組以外の子もいないケースを基本に説明します。
同居し、住民票も同一世帯で、生活費を分担して暮らしている二人は、生計同一を確認しやすい典型例です。未支給年金には、遺族厚生年金の生計維持認定で使う収入要件はありません。二人とも働いて収入があっても、それだけで対象外にはなりません。
入院などで住所が分かれている場合は、生活費・療養費の負担や連絡・訪問の状況など、実際の生活関係を確認します。別住所の場合には生計同一関係に関する申立書などを用います。一方、縁組はしていても、別居して家計も完全に独立し、生計同一の実態がなければ請求対象にはなりません。
請求順位は、配偶者 → 子 → 父母 → 孫 → 祖父母 → 兄弟姉妹 → その他の3親等内の親族です。このうち、死亡時に生計を同じくしていた方について順位を判定します。実親が存命でも、生計が別なら請求資格はなく、相続のように「親だから当然に共同で受け取る」という扱いにはなりません。同順位の請求資格者が複数いる場合は、そのうち一人が代表して請求します。
未支給年金は、遺産を相続する権利とは別の、遺族本人の請求権です。遺言で受取人を自由に指定したり、亡くなった方の死後事務委任契約だけで請求を任せたりするものではありません。手続きの支援が必要な場合は、請求資格のある方から別途ご相談を受け、年金事務所への確認や社会保険労務士へのご紹介につなぎます。
確認する資料は、亡くなった方の年金情報、養親子関係が分かる戸籍、生計同一を確認する住民票や必要に応じた申立書などです。先順位・同順位の請求資格者の有無も併せて整理します。
養子縁組には、双方の縁組意思が必要です。本人に縁組の意思がないのに、相手が勝手に届け出た場合は無効です。判断能力が著しく低下してからの届出でも、届出時に意思があったかが争点になります。
相続や節税を動機にすること自体が、直ちに無効の理由になるわけではありません。最高裁も、節税の動機と縁組意思は両立し得るとしています。ただし、同性パートナー間の縁組を一律に有効と判断した判例ではありません。
双方が内容を理解し、親族として相続・扶養の関係を持つ意思を明確にしていることが大切です。相続で取り分がなくなる親族と対立している場合や、意思確認に不安がある場合は、届出前に弁護士も交えて検討します。本人の意思・説明の記録と、遺言による備えを整える理由はここにあります。
交際を終えたり別居したりしただけでは、相続・扶養の関係は残ります。双方が離縁に合意すれば協議離縁の届出で解消できますが、一方が拒む場合は家庭裁判所の調停などが必要になります。最終的に裁判で離縁するには、法律上の離縁原因が問題になります。
また、養子縁組をしただけでは、離婚の財産分与制度は使えません。二人で購入した家、預貯金、生活費をどう清算するかは、パートナーシップ合意契約書などで決めておくと、話合いの基準になります。慰謝料などの紛争は、二人の関係や具体的な行為に基づいて判断されます。
民法736条(養親子等の間の婚姻の禁止)
養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第七百二十九条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。
条文の「第729条の規定により親族関係が終了」とは、離縁のことです。つまり、一度養親と養子になった二人は、離縁しても、その二人の間で結婚することはできません。血のつながりがなくても適用される、現行法上の制約です。
なぜ、離縁した後まで禁止するのでしょうか。法律は、養子縁組による親子にも、実の親子と同様の家族関係の秩序を保とうとしています。親子として扱ってきた関係を、夫婦の関係へ切り替えることを認めないという、社会倫理上の考え方に基づく規定です。裁判例も、親子の関係と婚姻関係の秩序を区別する趣旨を説明しています。
離縁すればすぐ婚姻できるとすると、縁組を解消するだけでこの禁止を回避できてしまいます。そのため、親子関係が終わった後にも、婚姻禁止の効果を残しています。
将来、同性婚が認められても、736条がそのまま適用される制度であれば、過去に養子縁組をした二人は結婚できません。
婚姻できるようにするには、この規定との関係を調整する法改正や例外措置などが必要です。その措置が設けられるかは、現時点では決まっていません。
したがって、「今は養子縁組をして、同性婚ができたら離縁して結婚する」と自由に切り替えられることを前提にはできません。将来の結婚を大切に考えている方は、いま得られる相続などの効果と、このリスクを比べて判断します。
同じ氏を名乗り、法律上の親族になって支え合うことを望むなら、養子縁組は検討する価値があります。相続や扶養の効果と、離縁・婚姻の制約まで含めて受け入れられるかが判断の軸です。
主な目的が「財産を残す」「入院時に支える」「葬儀を任せる」なら、まず遺言や契約で実現する方法を比較できます。氏を変えたくない方、将来の婚姻の選択肢を重視する方は、とくにこの比較が大切です。
養子縁組を選んだ場合にも、次の備えを足すことで、残された方の生活や手続きまで具体的に準備できます。
はい。「相手に財産を残したい」「入院時に困らないようにしたい」など、気になっていることからお聞かせください。養子縁組の効果と影響を確認し、遺言・契約などで準備できることも一緒に整理します。
どちらが先に亡くなった場合も想定して、相続人、住まいの名義、遺言の内容を確認します。入院や判断能力の低下への備え、葬儀・納骨の希望、残された方を支える人についても、必要に応じて準備を加えます。
お二人が成人で、実親が後見人として関わるなどの特別な事情がなければ、実親の同意は不要です。実親が反対していることだけで、届出ができなくなるわけではありません。届出書には成年の証人2人の署名が必要です。法律上の配偶者がいる場合はその同意、後見人が被後見人を養子にする場合は家庭裁判所の許可など、別の要件があります。
法的に同意が必要かという点と、縁組後の相続や親族関係への影響は分けて確認します。
はい。まずはご自身の希望や不安をお聞かせください。実際に養子縁組や二人の契約を進める際は、双方の意思確認が必要です。連絡方法や、ご家族への情報共有についてのご希望もお知らせください。
「縁組したら二人の相続はどうなるか」「遺言だけで希望を実現できるか」「残された方の生活費をどう用意するか」。このページで気になったことを、お二人の状況に当てはめて確認します。
吉村行政書士事務所では、家族関係・財産・生活費・作成済みの書類を伺い、養子縁組を選ぶ場合と、遺言・契約で備える場合を比較します。相談の後に、何を決め、どの書類を準備するかが見えるようにご案内します。

財産・住まい、入院、ご親族との関係など、気になることからお話しください。
どちらが先に亡くなる場合も確認し、すでにある遺言・契約も踏まえて考えます。
遺言・任意後見・死後事務委任などの文案と、依頼範囲・費用をご案内します。縁組の有効性をめぐる争いは弁護士、税額の試算は税理士へつなぎます。
ご相談時に資料をすべて揃える必要はありません。戸籍、作成済みの遺言・契約書、財産や住まいの概要が分かるものがあれば、確認しながらお話しできます。
年齢・所得などの数値は、記載した時点・年分の制度によります。実際の届出や請求では、その時点の制度で確認します。